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Record Details


くるり 学(まなぶ)の 牛津録
Appendix #: 06

Title: 「存命行為」

Issued on: 2003年6月14日
Last modified: 2003年6月14日

メルマガで発行したモノを、加筆修正して、随時ここにアップしていきます。



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◎編集後記


 時間を追うごとに書かなければならないことが溜まっていきます。溜まっていく限り、牛津録を途中でやめることはないでしょう。次はまた半年後かもしれません。ひょっとして二、三ヶ月後かも知れません。でも生きてる限り、書き終えようと思うでしょう。もしまた読んでもらえるようなことがあったら、そのときまた確認してやってください。
 
 牛津録。80%の真実と20%の囁き。
 これは、僕と僕にまつわる素敵な人たちのとてもとても貴重な記録です。

by Kururi 2003年6月6日

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      !!無断転載厳禁!!     
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発行者名:くるり 学 (kururi_m-lj@infoseek.jp)
マガジン名:英国留学 牛津録
発行周期:ほぼ隔週刊(不定期って申請したのに[泣])
発行人サイト:http://members.at.infoseek.co.jp/kururi_m/
(C)M.Kururi, 2001-2004. All rights reserved.
このメールマガジンは『まぐまぐ』『melma!』『メルマガ天国』『Pubzine』 で発行しています。マガジンIDは以下の通りです。
(まぐまぐ: 80277)(melma!: m00055251)(メル天: 8665)(Pubzine: 16678)





SIDENOTES

 *


  • 登場英単語:



Body

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■DOMI|MINA■  くるり学 の                ■■■■
■ NVS|TIO ■          牛津録           ■■■■
■ILLV|MEA ■        oxford  record         ■■■■
■ |VVV| ■                第六余録    ■■■■
■■■■■■■************************■■■■

●第六余録「存命行為」

  まず何から書けばいいのかよく分からないんだけど、とりあえずだらだ
 らとでも何か書き始めてみます。このメルマガも最初はそういうつもりで
 始めたんだけどね。書き始めるとどうも欲が出ちゃうや。
 
  まず天気の話でも(笑)。
 
  今日は雨です。イギリスじゃあ「いつもの天気」といえばそうなんです
 が、今日そんなことをイギリス人の友達に言ったら、六月の雨は普通じゃ
 ないよと言い返されてしまった。日本じゃあもうすぐ梅雨だろうから、今
 の日本よりいいかもね、とお茶を濁しておきました。って何の報告をして
 んだか、いったい。でもこの雨のお蔭で、この音のお蔭で、久しぶりにゆっ
 たりした気分で書けてるような気がします。変なもんだ。
 
  この余録、大した意味もなく書き始めたのにはそれなりに理由があって、
 実はメルマガ登録抹消の危機が迫ってたんです。最近忙しいし、本業の研
 究をどうにかしないことには本末転倒なので、書く気がおきなきゃ終了も
 仕方ないかと思ってたんですが、やっぱりというか結局というか、重い腰
 をあげました。書かなきゃいけない。一度書き始めた者にはなんらかの義
 務が生じる。そんなことを思ったりで。変なもんだ。
 
  前に本編を書いたのは……ほぼ一年前ですか。なんて奴だ自分。不届き
 千番だなあ。えーと、来た頃の話まで遡って、留学生活の総括みたいに〆
 めようと画策してたみたいですね(前のを掘り返しながら、笑い)。本当
 ならとうの昔に終わってるつもりだったらしい。博士論文を書き終えて、
 提出、それから最終口頭試験をパスして終了。そこでメルマガもおしまい。
 そういうだんどりだったんです。それで秋あたりに終了する予定が、ずる
 ずると、自分の性格をまるで表すようにオックスフォードに居ついてしまっ
 てます。笑うに笑えないな、マッタク。
 
  で、研究会議ラッシュが終わった去年の七月あたりから博士論文執筆に
 着手して、というか着手してるつもりになって、ぶらぶらだらだら、九月
 まで過ごしてしまいました。そうこうしている内に、来た当初から知合っ
 てた人もどんどんいなくなって、かなり寂しい状況になっていきまして……
 最後だからと会って話し込んだり、一緒にお酒を飲んだり。その合間にま
 た論文執筆したり。
 
  そんなこんなでだめ〜な感じだったペースも、目標を十二月にすえて自
 分の尻を再び叩きました。取りあえず五分の四ぐらい終えて十一月頭に指
 導教官に見せにいったら、いろいろちょこちょこと言われて微妙に軌道修
 正。お願いしていた最終試験の試験官も、十二月はこっちがダメと返事し
 てきたので、取りあえず一月に試験予定日を変更しながら十二月頭に第一
 稿終了。友人二人に校正を頼んでたんだけど、いつのまにかクリスマス休
 暇に突入で雲行きが怪しくなり、ついでに試験官の一人からやっぱり一月
 はダメで二月半ばかいいと返事をもらい、校正も一月頭まで延長すること
 に。それで一月休み明けに提出したら、こんどは事務の不手際で受領が二
 週間延び、そのせいでなぜか、試験官二人ともから、三月じゃないとダメ
 という返事がまた到着。最初の延長(十月頭から十二月頭にシフト)から
 通算で四回目の延長を経験してしまいまして、んでやっとこさ三月頭に試
 験を受けたんです。やっとだよホント。で、結果。
 
  当たって砕けました(笑)。
 
  いろいろ理由はあるんだけど、それら全部が悪くというかうまく噛みあっ
 て砕けてしまいました。砕けたと言っても、ちょっと書き直してもう一回
 やろうという話なんで、前のはチャラってことなのかな。この辺りの展開
 はホントにドラマみたいだったので、いつかちゃんと書きたいと思います。
 
  それで、ですね。書き直しの部分なわけですよ問題は。ぶっちゃけた話
 が、その部分でモロに試験官と反目したんですね。一年以上前に書いた部
 分で、学会の評価もそれなりもらってるんですが、一番説得できてなきゃ
 いけない相手ができてなかったと。で、そこを削って、新しいネタを差し
 込めという要求が下ってきたんです。そう、正に「下ってきた」。ムカッ。
 (あ、なんか愚痴モードに突入の予感)
 
  新しいってね、そうそうすぐに出来るわけないんだよ。第一こちとら博
 士論文にしてるわけだ。博士論文に載せるような話を一日二日でできるわ
 けないんだよ。普通は二年から三年つかうわけよ。喩え10ページやそこら
 と言っても寝て起きたらできてるようなもんじゃないんだよ。できれば5
 ページに減らして欲しい(弱気)。
 
  とにかく、この事件は指導教官をも激震させ、二人して二人三脚でなん
 とか六月までに(つまり今月までに)新しい部分を創ってしまおうという
 ことになりました。少し進んでは彼と討論し、こちらが甘い議論を漏らす
 と即きびしいツッコミを入れる、難問で一時間二時間二人腕組みし続ける、
 そういう日々が続いたんです。あまつさえ学術論文として投稿しようとい
 う段取りになっていたので、本当に寝る間も惜しむように八時間の睡眠を
 取りながら、論文片手に即席らーめんをすする日々が続きました。この三
 ヶ月間ずーーーっと半缶詰状態です。今まで完全放任状態だったから、こ
 れで彼と二、三年分闘った気がしますね。もう結構へろへろです。
 
  それで、先週やっと彼の仮許可が下り、取りあえず投稿用にと下書きを
 することになりました。こいつを書き上げてたたき台にし、彼と議論して
 納得させればこのミッションは終了間近なわけです。て言いながら半分し
 かまだ書けてない……うう、つらい、でもそろそろ奴とまた対決しないと。
 
  そう思っていた一昨日の朝。十一時からのティータイムで顔を合わせた
 にっくき内部試験官が妙なことを言ってきました。
 「君の指導教官は今朝亡くなったよ」
 「ホワッツ?」
  彼は話し続ける。今そこで作られたような話に、こちらは目が点になる
 一方。耐え切れなくて口がゆるんだら、彼の口元も緩む。なんだよもう、
 と僕はすかさず切り出した。
 
 「This must be a joke.(これ、冗談でしょ)」
 「You would think so, and I also thought so.
 (そう思うのも無理はない。俺もそう思ったんだから)」
  笑いながら。
 「Sorry, I can't believe it now.
 (いやごめん、ちょっと今そんなこと信じられないし)」
  笑いながら、その場を足早に離れた。
  周りはみんな笑ってる。僕も笑う。それでちょっと一服したくなって学
 部を出ようと戸口まで行く。そこで、学部長からの急告が目に入る。僕は
 それを読んで、また笑いながら建物を出る。出たところから散歩をしなが
 ら胸元のタバコを取り出す。ライターが切れたことに気付いてマッチを買
 いに、歩いて三分のニューススタンドまで駆け込む。そこで買ったマッチ
 を使って早速タバコに火をつけて、帰り道、いつものように教会の裏を通
 り過ぎる。
 
  太陽が眩しい。いつもこんな日はきっと太陽が眩しい。その教会の壁は
 時代がかって美しく、それこそ何百年も、僕の学部の人達が行き交う姿を
 眺めてきたに違いない。僕もその眺められた一人だし、僕の指導教官も、
 例の内部試験官もそうだ。
 
  教会横の芝が青かった。イギリスの芝はとても青いが、特にその日の芝
 は燦燦と降り注ぐ日光と肌寒く澄む空気にふれて、いっそう生き生きとし
 ていた。
  それを眺めている内に、いつしか僕は歩くのを忘れて立ち止まっていた。
 眩しい太陽と青が滲む。
  気付くとこんどは、その教会の裏を無意味にぐるぐる回り続けていた。
 吸い終えたタバコを棄てて、もう一本に火をつける。
 
  そうだ。今なら分かる。僕はそれなりの理由があって、書くべくしてこ
 れを書き出してしまった。
  ああ、人間はなんて不自由な生き物なんだ。
  この二、三日の天気が嘘のように、今夜は外で雨の音が響き続けている。

  急告に書かれてあったのはつまらなく下らない、その内部試験官の冗談
 で、まだ暫く冗談が続きそうです。
  明日、彼の葬式です。
 
 
 (了)
 
 
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